「先輩!お金の相談に乗ってください!」(東洋経済新報社)川原 愼一/水野俊哉の新刊インタビュー

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先輩!お金の相談に乗ってください!新刊インタビュー
水野俊哉の新刊インタビュー Vol .16 より転載 →水野俊哉さんオフィシャルサイト

インタビュアー
【水野俊哉さんプロフィール】 1973年生まれ。ビジネス書作家。

著書一覧 「成功本50冊勝ち抜け案内」(光文社)「成功本51冊もっと勝ち抜け案内」(光文社)
「お金持ちになるマネー本厳選50冊」(講談社)「知っているようで知らない 法則のトリセツ」(徳間書店)
「「ビジネス書」のトリセツ」(徳間書店)「モテ本案内51」(ディスカヴァートゥエンティワン)
「誰もが無理なく夢を引き寄せる365日の法則」(きこ書房)「ビジネス本作家の値打ち」(扶桑社)
「マトリックス図解思考」(徳間書店)「徹底網羅お金儲けのトリセツ」(PHP研究所)
「ビジネス用語の常識・非常識」(双葉社)

取材/日経新聞、日経ビジネスアソシエ、日経キャリアマガジン、ゆかしメディア他多数

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★先輩!お金の相談に乗ってください!新刊インタビュー

≪水野≫ 本日は「先輩!お金の相談に乗ってください!」(東洋経済新報社)を
出版された川原愼一先生にお話をお伺いします。

本日はよろしくお願いします。

≪川原≫ こちらこそ、よろしくお願いします。

≪水野≫ 川原先生は、私の命の恩人でもあり、再生の神様とも呼ぶべき人物で、
実務の世界では高名な先生です。

「再生のプロが教える、リスク管理とリカバリーの方法」と副題にもありますが、
本書を出されたきっかけを教えていただけますか?

≪川原≫ はい。いわゆる成功本は世の中にあふれていますが、
「失敗」と真摯に向き合う本が少ないと以前から感じていました。

私自身、ベンチャー起業を立ち上げて失敗した経験があり、
それがきっかけで「事業再生コンサルタント」になり、今があります。

そして色々な失敗学の本を読みましたが、失敗学とは、外部の失敗から学びを得て、
ケーススタディをする学問です。

ビジネスのお金の失敗と、学問上の失敗学とは全く違います。
そこで、私はお金のリスク管理、失敗した時のリカバリーの方法をテーマに
セミナーでお話した内容が、出版社の目にとまり今回出版することになりました。

≪水野≫ そのような経緯で出版されたのですね。
ところで、川原先生は、ビジネス書で失敗が語られない原因はなぜだとお考えになりますか?

≪川原≫ 何かを始める時に、事前に失敗について語るというのは、
弱気だと受け取られるからではないでしょうか。

本書の「はじめに」でも書きましたが、野球でも、攻撃におけるサインは、
「ヒットを打て」「ホームランを打て」はなく、ディフェンスのサインが中心です。

ビジネスでも同じように、守り(= 失敗に備えること)は勝者への絶対条件です。
登山家が山頂の眺めの素晴らしさを語っていたとしても、実際には万が一のときの装備を備え、
試練に耐える肉体にするための訓練を積み、山に挑んでいます。

このように、皆さんに思い切り人生をチャレンジしてもらうためにも、私のリスク管理、
リカバリーの知識がお役に立てればと思い書きました。

≪水野≫ 安心してチャレンジするためにこそ、本書の知識は皆さんにとって必要だと思います。

≪川原≫ 実は当初、「失敗からはじまる人 失敗で終わる人」という
タイトルをつけたかったのですが、失敗というネガティブな言葉をタイトルにするのは
難しいとの出版社からのご意見をいただき、失敗という言葉をはずしました。

ただ、内容は事業におけるディフェンスの本ですが、私は成功本だと思っています。

≪水野≫ 私も本書は成功本だと思います。
目標達成的な成功本は読者の方も喜びますし、前向きで売れそうな気もしますが、
実際には、リスク管理をせずに、成功はできません。

≪川原≫ おっしゃる通りです。成功するには、実際に行動をすることと、
失敗する要素を潰していくことの、両方が必要です。

≪水野≫ 起業したい方は多いと思いますが、
正しい知識を指導してもらえる機会が少ない上に、
リスク回避や、守ることの意義を語られにくい現状があります。

無知な状態でスタートしてしまうことは、本書にも書いてありますが、
夜の高速道路をヘッドライトもつけずに疾走しているスポーツカーようなもので、
確実に事故にあいます。

≪川原≫ 世間一般の方は、私から拝見して、お金のリスク管理と、
リカバリーの方法を知らない方がほとんどだと感じています。

事故にあってはいけないけれど、事故にあうのが人生です。
事故にあったからといって人生が終わってはいけません。

失敗してもリカバリーすればいいんです。
失敗は決して不幸ではありません。
ビジネスでも日常生活でも、どこにでも転がっている当たり前のものです。

しかし、その対処方法を間違えたり、その事実を認めるのがいやだからといって
放置していたりすると、本当の不幸がやってきます。

そうならないために、ビジネスと生活において、
ディフェンスの正しい知識を身につけていただきたいと思います。

≪水野≫ とても良く分かります。ディフェンスも大切ですが、
もし失敗したとしてもきちんと向かい合い、正しい方法で対処すればいいということです。

「はじめに」に、「守りにはセオリーがある」との言葉があります。
セオリーを守れば、ゲームをつくることができる。勝つか負けるかは時の運だが、
自分たちの実力をフルに発揮することが出来る。という部分に共感しました。

本書は、全7章構成になっています。

1章 財務3表を使って資産を総チェックする。
2章 お金で失敗するタイプを徹底分析!
3章 もしお金で失敗してしまったら
4章 お金の借り方、完全マニュアル
5章 「投資」「私募債」「ジョイント・ベンチャー」を使いこなす
6章 本気でお金に困ったら
7章 失敗しない不動産の選び方、不動産投資のポイント

かなり幅広い内容ですね。

≪川原≫ これでも書こうと思った内容の半分なんですよ。
編集者さんと話し合い、絞ることになりました。
経営者の方だけを読者対象にするのではなく、一般の方に幅広く読んで頂けるビジネス書として
書かせていただきました。

≪水野≫ それでは章の順番にお話しを伺っていきます。

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1章 財務3表を使って資産を総チェックする。

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≪水野≫ 企業の財務は財務三表として、貸借対照表、損益計算書、
キャッシュフロー表の3つの視点で監視されています。
これを家庭の家計簿にも活用できるように分かりやすく解説してあります。

≪川原≫ 本書は分かりやすさが特徴です。
私が言いたいことを言うのではなく、一般の読者の方に分かってもらえるように書きました。

≪水野≫ 全体がストーリー仕立て、会話調になっているので、とても読みやすく吸収できます。

真骨頂でもある経営に関する部分もありますが、不動産投資の方法、投資と投機、
リスクと危険の違いなど、一般の読者の方にも参考になるでしょう。

専門家であれば「リスク」について簡単に説明できるかもしれませんが、
一般の方に説明するのは難しいと思います。金融における「リスク」と「危険」は違うなど、
本書に分かりやすく解説してあります。

≪川原≫ 最大のリスクが何かを分かっているのがリスクです。

FX(外国為替証拠金取引)のように、出したお金以上のお金を損失するのは
リスクではなく危険です。

リスクというのは、最大投資したお金がゼロになる。それがリスクです。
キャッシュフローがどうなったか、バランスシートがどうなったかを頭に置きながら行動するのが、
投資リスクです。

例えば、定期貯金という金融商品は、より高い配当を得る機会を損失しているリスクを負っています。
これに対して「危険」というのは、素人が金融のプロに勝負を挑むような無謀な戦いを指します。

≪水野≫ 1章の4にもありますが、「金融アマチュアがしがちなお金の失敗」で、
「投資と投機」「リスクと危険」の違いを知るという項目があります。

例えば、FXなどは、プロにとっては危険ではなくても、素人にとっては危険です。

≪川原≫ 「投資と投機」の部分はもう少し過激に書きたかったのですが、
活字にした時の印象を考え、控えた部分もあります。私はFXや株は、
レバレッジをかけたプロが素人から巻き上げるシステムだと感じています。

ディーリングマシンから目を離さずにいられる人がやるものです。

≪水野≫ 確かにFXなどは、金融のアマチュアは簡単に手を出すべきではないです。

≪川原≫ 年間1割2割のリターンというのは投機です。
例えば、無リスク商品と言われるのは、国債です。その、国債の倍リターンがあるとすれば、
相当良い利殖です。

ところが年間1割、2割キャピタルゲインするというのは、
はっきりいって相当リスクがある投資だと理解してください。

リスクとリターンは同じ割合で存在しています。

≪水野≫ FXはリターンが100倍ということもありますから。

≪川原≫ 100倍のリターンがあるということは、100倍のリスクがあるということです。

≪水野≫ リスクとリターンの関係を皆さん知らずに、
儲かるという良い部分だけを見て危険な投機をされるのでしょう。

下手をすると全財産を失う可能性もあります。
興味を持って頂いた方は、是非本書を読んで頂きたいと思います。

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2章 お金で失敗するタイプを徹底分析!

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≪水野≫ 本書の70ページに、お金で失敗しやすい理由があげられています。

1、目の前の現実を直視しようとしなかった
2、相談することが恥ずかしいと思っていた。再生のための知恵をしぼらなかった
3、金融機関がどう出てくるかわからなかった
4、肝心なことを決断できなかった
5、なんとか元の良い状態に戻ろうとしてしまった

これはまさに人生の後輩に、転ばぬ先の杖として伝えたいことですね。

≪川原≫ はい。失敗する方のほとんどが、5つのパターンにはめられています。

野村克也さんの名言で「勝ちに不思議な勝ちあり。負けに不思議な負けなし」という言葉があります。

守りを固め、ここだという時に勝負に出る戦法はありますが、攻めるだけで守りもせず、
慌てて守りに入るという戦法はないのです。

≪水野≫ それは戦法でもなんでもないですね。

≪川原≫ 野球でいえば1点もとられなければ、負けようがありません。
そのくらい守りは大切です。

≪水野≫ おっしゃる通りです。攻めるためにも、守りをどれだけ固められるかが大切です。
さて、失敗は強制的に「変化」を迫られている局面だと本書に書いてあります。

1、実態を把握し、失敗を認めることで、「悩む」から「考える」段階にマインドが移行する
2、具体的にどんな選択肢があるかをよく知る
3、現状を把握し、修正・変更を躊躇しない
4、「決断」する
5、元に戻ろうとしない。新たな展開こそリカバリーだ!

私は特に、ビジネスにおいては、決断力の必要性を感じました。
現状を把握し、この先何が起こるのかなどのリスクを考慮し、決断したら、
関係ない選択肢は外していくことが必要です。

選択肢を絞っていかなければ決断は明確になっていかないからです。
会社を経営していれば、色々なトラブルが起こりますが、
是非、本書を参考にしていただきたいと思います。

≪川原≫ 「どうしたらいんだろう」「どうしたらいいんだろう」と、
思考がぐるぐる回っている間は何も進みません。

ところが、「どうするべきか」「何が出来るのか」というように、
悩むよりも具体的にやれることは何かに気持ちが向きはじめたら、
考える段階に入ったという証拠です。

そこで、私のような水先案内人が選択肢を提示し、先々に起こることを伝えます。
ご自身のビジネス、性格、おかれた環境を客観的に考えて、
注意点と必要なことが何かを検討しているうちに、きっと前に進むことが出来るでしょう。

≪水野≫ 同じ所をぐるぐる回っている状態から、一歩段階を飛び越えて、
そこでもまたぐるぐる回るかもしれませんが、次々と飛び越えて行けばいつか抜け出せる時が来ます。

≪川原≫ そういうことです。

≪水野≫ 悩んでいる時は、専門家に相談した方がいいでしょうね。

≪川原≫ はい。特に経営者で財務に強い人は基本的にいません。
ベンチャー起業された方は、ほとんどの方に会計の右腕がいないのですから、
お金のことについては、第三者に相談しなくてはいけません。

弁護士、会計士、コンサルタントなど複数に相談するといいでしょう。
出来れば、2、3人の方に相談し、自分にあった人に顧問をお願いしたらいいと思います。

各自それぞれ得意分野が違いますし、経験も異なります。
ご自身の考えに最もあったコンサルタントを選択することがいいでしょう。

≪水野≫ 再生コンサルタントを名乗る司法書士の方などもいらっしゃいますが、
弁護士さん、司法書士さん、川原先生のような事業再生コンサルタントの方など、
いくつか回って自分で納得のいくところを見つけるのがベストということですね。

≪川原≫ はい。選ぶ際の基準として、手続き的なアドバイスをしてくれるだけではなく、
その方にとってどのような方向性があるのかということを、
明示してくれるコンサルタントがいいと思います。

身売りするべきだ、破産するべきだというような、得意なフィールドに持って行くのではなく、
未来の可能性を見出してくれる人で、相性のいい方を探すといいでしょう。

≪水野≫ 加えて、経営経験がある人に相談するのがいいと思います。
何らかの国家資格を持っていたとしても、本人に経営の経験がないと、
経営者の心理が分からないでしょう。プロに相談することで、心理的にも楽になると思います。

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3章 もしお金で失敗してしまったら

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≪水野≫ 川原先生は、支払うお金に、名前と優先順位をつけるということをおっしゃっています。
お金に名前をつけるというのは、支払うお金が買い掛けなのか、人件費なのか、
金融機関への返済なのかということを分けて考えるという意味です。

リカバリーの優先順位は特に大切で、大原則は、人→物→金(融)です。
この順番で手元のお金を使っていくことが絶対条件だと本書にも書いてあります。

時系列的に言うと、手形がある場合は落とさなくてはいけません。
更に、本業は果たしてキャッシュを生み出せているか?を問いかけ、
次に金融機関に対するリスケジュールをします。

継続が難しいのであれば、廃業、再生というプランのシュミレーションをする時期かもしれません。

抵当権を設定されている不動産、担保をとられている不動産の、実勢価格、
抵当権の内容を調査し把握するなど、具体的な内容が書かれています。

≪川原≫ 廃業は悪ではありません。悪とは、キャッシュが続かない、利益がない、
赤字であるということを言います。

悪いことを継続し続けても意味がありません。事業をたたんで、
一度やめて再チャレンジした方がいいです。皆さん、そこになかなか目を向けられません。

≪水野≫ 廃業かどうかの線引きは、営業利益が出ているかどうかという部分で
見極めるのがいいでしょう。

≪川原≫ 事業再生は柔軟でなければなりません。
でも一つだけ頑固に守るべきは、お金の優先順位です。
人→物→金 この順番です。
(人件費→買い掛け(仕入先)→金融機関)

これが支払いの大事な順番で、これだけはどの段階になっても守らなければなりません。
他のことは放っておいても大丈夫です。

多くの人が間違うのは、金→物→人の順番に支払っていくことです。
先に振り込んでしまって手元にキャッシュがないと、後で大変なことになります。
頑固にこの順番を守ってください。

≪水野≫ この順番は経営、ビジネスの鉄則ですが、
金融機関に先に返すことを学校で推薦しているような気がします。

そのマインドを修正しないと、経営が成り立たないでしょう。

普通は借りたものを返すことからはじめるでしょうが、従業員への人件費を払わないで、
先に金融機関に払っていると、従業員が辞めてしまい事業が継続できないなど、
破たんの原因になります。

≪川原≫ 労働債権は、金融機関への一般債権よりも順位が高いです。
堂々と、人を優先してください。

≪水野≫ 私は川原先生の勉強会にも通わせていただき、色々と教えていただいて知っていますが、
本書にはお金についての大原則が書かれています。キャッシュフローの重要性など、
是非、読んで参考にしていただきたいと思います。

≪川原≫ 素人は利益を語り、プロはキャッシフローを語ると言います。
そのくらいキャッシュフローというのは大切です。

支払いは2カ月後に回し、利益をすぐに確定して現金を手元に残す。
今日の売上のキャッシュはいつ入るのか。それを意識することが黒字化に繋がります。

財務が頭になく、キャッシュフローが全く分かっていない人が多すぎます。
お店を開店した日につぶれるということがありえるのです。

立ち上げるところまでのお金しか考えていないので、翌日の回転資金がなくてつぶれるということが、
本当にあり得るのです。

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 4章 お金の借り方、完全マニュアル

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≪水野≫ 個人がお金を借りる時のポイントの中に、
「元金は返すもの、金利は支払うもの」との言葉があり納得しました。

≪川原≫ 新聞でさえ「元利合計10万円の返済ができずに…」というような記事が掲載されています。

元金というのは借りた金額で返済ですが、金利は金融機関の利益なので、支払いなのです。
元金と金利を分けて考えないといけません。

一般的にローンを組む時に元金が幾らで、金利が何%で幾らだときちんと把握しておかないと、
単純に、毎月5万円支払っていけばいいんだと思ってしまいます。

金利が1%違うと、どのくらい支払い額が増えるのかを考える人は少ないです。
例えば1%が2%に増えても、金利が倍になると思う人はまずいません。たったの1%かと思うでしょう。
でも、本当は倍になるんですよ。

住宅ローンの場合何年間も、何十年間も積み重なっていく訳です。
元値の倍の金利を支払うことになります。
3500万の住宅ローンを調達したら、最終的には7000万円程度を支払うことになるのです。

≪水野≫ 金利は複利で増えて行きますから。元本と金利をきちんと分けて考えることが重要です。

個人が借りる際の、住宅ローンの返済交渉についてです。

1、返済は「人→物→金」の大原則を貫く
2、銀行交渉は非対象取引
3、お金の流れで考える
4、中途半端な返済猶予はかえってマイナス

他にも金融機関の種類ごとに、傾向、対策について説明があります。
(大手都市銀行、公的金融機関、地元信金、地元地銀など)

一般の人にとっては銀行と交渉する経験はあまりないとは思いますが、交渉の際は資料を提出し、
説明責任を果たす。全金融機関平等のリスケジュールであることを強調する。

経営改善計画の提出も必要だと本書に書いてありますので、参考にしてください。

≪川原≫ ただ返せないと言っても、金融機関の担当者は上司や本部に報告する責任がありますので、
何の資料も客観的な材料もなく「はい、そうですか」とは帰れません。
資料を作るというディスクローズ(明示)が必要です。

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 5章 「投資」「私募債」「ジョイント・ベンチャー」を使いこなす

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≪水野≫ 金融のアマチュア(※注 親、親戚、友人などの金融のプロではない方のこと)から
お金を借りてしまった時は、注意が必要だということですが。

≪川原≫ 親、親戚、友人のことを、金融アマチュアと呼ばせて頂きました。

よく、親から借りたお金は大丈夫、親戚、友達のお金は待ってくれると言いますが、
プロの金融機関のプロよりも、アマチュアへのお金を先に返済することをお勧めします。

≪水野≫ 本書に理由が詳しく書いてありますが、金融のプロはお金を貸すのが仕事なので、
返せなくても事務的に対処してくれます。

金融アマは信用で貸してくれているので、それを裏切ってしまうと後々大変なことになります。

≪川原≫ 身の回りからお金を調達してはいけないということではありません。
ちょっとお金が足りないから貸して、と言えば、友達も嫌とはいえないでしょう。
だからこそきちんと返済しないと恨みを残します。

身近な人からお金を借りる場合には、「ビジネスとして投資しませんか」という方法があります。
これを、私募債と言います。

ジョイント・ベンチャーという方法もあります。資金はいらないので、ジョイントしてやりませんか?
という方法です。

一般的には、借金として銀行から融資を受けるか、出資を受けることを考えがちですが、
私募債やジョイント・ベンチャーなどであれば、機動力もあり、失敗のリスクを少なくできます。

≪水野≫ 例えば、出資を受けた時点で、会社の支配権も相手のものに変わってしまいます。
私募債、ジョイント・ベンチャーはその点、安心です。

≪川原≫ 起業する時に必要なお金を、全額銀行からの借り入れだけで賄えることは、
滅多にありません。
私募債やジョイント・ベンチャーについても選択肢にいれていただきたいです。

≪水野≫ 私募債という言葉を聞いたことがない人も多いかもしれませんが、
私的に債券を発行するということです。

例えば、50万円出してくれた人には、金利3%払いますという債券を発行するということです。

他には、レストランを開店する場合に、お金を出資してくれた人には、
クーポンを発行して飲食の時は10%割引するなどの特典をプレゼントし、
協力者として社債を受け入れてもらいます。

≪川原≫ 公募債は銀行、証券会社がマーケットから調達することです。
私募債は49名までなど条件はありますが、比較的手続きも簡単です。
出資希望者からお金を集めるための説明をする義務があるので、
それを作成しているうちに事業プランも明確になるでしょう。

借金をして、「2年間返せないからちょっと待ってくれ」というのと違い、
私募債ならば、最初の2年間は金利のみの支払い、3年目から元本の返済をすると言うことで、
ビジネスとして、同じ元本を返さない状態であっても、きちんとした印象になります。

≪水野≫ マーケティングやジョイント・ベンチャーについても知らない方が多いと思いますが、
販路が弱い会社がPR会社とジョイントするなど、お金をかけずに、
双方にメリットがあることをジョイントで行うということです。

≪川原≫ 例えば、銀座のレストランの一角に宝石を展示するとします。

お店にとっても宝石はインテリアとしてプラス、売れたら宝石店が場所代を払うということであれば、
双方、1円も使わずに販売ができます。

このように、真ん中でジョイント・ベンチャーを企画する人間さえいれば、色々なことが出来ます。

≪水野≫ 全部自分のところでやろうというのではなく、
お互いの強みでジョイントするというのがプラスの発想ですね。

≪川原≫ お互いに双方のビジネスを盛り上げられればいいと思います。

実は、友人が「からしうどん」を開発しました。(うどんの麺にからしを練りこんだもの)
そこで、友人と、テナント、内装屋さんの3者でジョイント・ベンチャーが成立しました

友人は手持ちのお金がありません。
テナント経営者は、店舗スペースが空いているビルを所有しています。
内装屋さんも遊んでいるよりは仕事がある方が有難いのです。

今回の場合、儲かった額の何%を払うという条件でジョイントになりました。
テナントビルも、空いているよりは入った方がいいでしょう。
内装屋さんには、材料費だけ先に払うという条件で依頼しました。

材料費が100万円だとします。リスク代としてプラス100万円お渡しすれば、
万が一撤退の時の原状回復が出来ます。

内装屋さんには200万円を先払いすることで、悪くてもプラマイゼロ。
儲かったら4%を毎月配当で渡すのです。悪い話ではないでしょう。

テナントの家賃については、ビル保有者の元に儲かれば必ずお金が入ってきます。
儲からなくてもお金が減る訳ではありません。

ただし、注意していただきたいのは、ジョイント・ベンチャーは本人同士で条件を決めると
あまりうまくいきません。

コーディネーターが入ってリスクとメリットを客観的に判断した上で、
平等なビジネスモデルを構築することをお勧めします。

私募債や、ジョイント・ベンチャーも、自分たちだけで実行すると、
問題が発生しやすくなります。

≪水野≫ 自分一人で走り回っているのでは、マッチングの確率も悪いでしょう。
コーディネイターの方から紹介してもらうのが良いと思います。

若い方はお金を借りる、出資を受けるという発想の人が多いと思いますが、
ジョイント・ベンチャーや私募債などを考えてみてはいかがでしょうか。

≪川原≫ お金がないから事業が出来ないと考えるのはもったいないです。
本気でやろうと思っているかどうかです。やってみて駄目ならば、
そこで次のことを考えたらいいのではないでしょうか。

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 6章 本気でお金に困ったら

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≪水野≫ ここでは、何らかの理由で住宅ローンが払えなくなり、3カ月以上遅延して、
金融機関から、「期限の利益を喪失します」というお知らせが来てしまった場合などの
対処法が掲載されています。

「期限の利益」とは、融資額を分割して、25年、35年などの長期間で返せる権利です。
それを喪失するということは、一括返済ということになります。
このような通知が来れば、普通は焦ってしまいますよね。

≪川原≫ 通知が来た時に考えなければいけないのは、購入後2、3年経ち、
利払いしか出来ていないという場合です。
新築のマンションは買ったとたんに債務超過になります。

では、このマンションは誰のものなのかということです。
例えば売ってもローン分を差し引いて手元にお金が残らないというのは、
つまりそのマンションは金融機関のものだということです。

ですが、誰でも自宅を自分のものだと思う感覚があると思います。

≪水野≫ 確かに、心理的には私たちの家と思うのが一般的ではないでしょうか。

≪川原≫ あなたのものなら、売ったらあなたにお金が残るでしょう。
でも、売っても銀行の借金しか残らない。

つまりあなたのものではないという事実がそこにあるのです。

≪水野≫ 本書に「Houseではなく、Homeを守りなさい」いう名言が書かれてあります。
家が大事なのか、家族が大事なのか。根本を考えてみてほしいです。

≪川原≫ ローンのことで夫婦喧嘩が絶えない人もいます。
その人たちは、ハウスのためにホームをなくしています。

地方は良く分かりませんが、都市生活者にとって、
住宅が変わるのは何も珍しいことではないでしょう。

結婚、進学、就職で引っ越すことは多くの方があることです。
事業がうまくいかないことが理由で、引っ越しをしてもいいではないでしょうか。

≪水野≫ 最初は自分の城という執着が手放せないでしょう。
ここから追い出されたら、自分の人生は終わりだと思う気持ちも分かります。

≪川原≫ でも、本当はそんなことで人生は終わりません。

≪水野≫ 川原先生がおっしゃるように、不動産ローンが払えなくなった人は、
返済のために金利の高いお金を借りようとするのではなく、考え方を変えてください。
Houseが大事なのか、Homeが大事なのかを考えることです。

≪川原≫ 私自身が賃貸派だからそう思うのかもしれませんが、
ローンが払えないことで角突き合わせて嫌な思いをせず、
アイシャルリターンの精神で、また買えばいいのです。

お金で傷ついている人たちは、最前線で傷だらけになっても、まだ戦おうとしています。
最前線で傷を負ったら、いったん売って、傷を癒して、
力をためてまた最前線に出て行けばいいではないですか。

≪水野≫ 前半の投資の部分にも損切りの重要性が書いてありますが、損切りとか、
撤退は心理的に苦しいですが、一度諦めて撤退する勇気を持つことも大事ですね。

≪川原≫ ノーアウト満塁の時に、1点もやらないぞと思って、3、4点取られることもあれば、
ゲッツー体制で、2点はとられても、3点はあげないという守備の仕方もあるではないですか。
そのように、多少の損をしても、大きな損をしない方がいいのです。

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 7章 失敗しない不動産の選び方、不動産投資のポイント

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≪水野≫ 7章は現在の不動産の状況についてです。
買ってもいいマンションは、発売時の価格がいったん下落して、
中古市場での価値が安定した中古物件。

買ってもいい人は、安定した大企業に勤める方や公務員の方など、
参考になることが書かれています。

≪川原≫ 不動産に関して言えば、流動性が大事です。換金性といってもいいかもしれません。
いざ売ろうとした時にキャッシュに換えられる物件かどうかが大事です。

以前、日本郵便がかんぽの宿をオリックスに格安で売り渡すことが分かり、
批判の対象になりました。

物件を収益性でみると、赤字の物件は持っていたら赤字です。
価格を収益還元で見ればマイナスですから、買ってくれるだけ有難いくらいだと私は思います。

≪水野≫ キャッシュフローが赤字なのですから、現実的に言うと、ナイス損切りですよね。

≪川原≫ 値段などなくても売れるだけで有難いです。
こんな立派な建物を安く売るなんてという批判もありましたが、プロから見れば良い損切りです。

≪水野≫ 冷静に考えれば、経営を継続しても人件費など出て行くばかりで、
赤字が増えて行きます。まとめて安く買うということは、素晴らしい企業努力です。

その後の経営がうまくいくという保証はない訳ですし、安く買ってもらって、
再生してもらった方がプラスです。

≪川原≫ 極端な話ただでも引き取ってくれるなら、有難い話でした。
不動産購入は、流動性がとても大事です。

いいものであっても、いざというと売却できるかどうかです。
何か困った時に売れるのか、現金化して凌ごうと言う時に、売れないことが一番辛いです。

本書でREIT(不動産投資信託)を紹介しているのは換金性が高いからです。
REITは1日置きに新聞に株価が掲載されますから、リスク管理がしやすいです。

流動性と換金性はほぼ同義語です。
不動産投資をするのなら、流動性があり、すぐに金に変えられるものを基本としましょう。

≪水野≫ 見た目がいい、景色がいい、などで不動産を購入するのではなく、
資産として考えた場合には、その値段が適正かどうか。流動性があるかどうかを見極めて、
購入した方がいいということです。

≪川原≫ 沢山お金があって、惜しみなく使うことが出来るのなら、
好きなところに買ってもいいですが、景色がいいから先々値段があがるというのは難しいでしょう。
現在のようなデフレ期に不動産を購入するのは危険です。

投資物件として利回り等を考えるなら、むしろ大きな土地、立派な建物ほど税金も維持費もかさみ、
マイナスの資産になります。

≪水野≫ 不動産投資についても、是非、本書を参考になさってください。
7章まで順をおってお聞きしましたが、今日は本当に役にたつお話をお聞きすることが出来ました。

非常に実践的であると同時に、幅広く家計、経営、不動産投資のことまで詳細に説明してあります。

私は、「おわりに」に書いてある言葉に感動しました。

「お金だけを得て幸せだった人物を私は知りません。
お金だけを目的とする人生も、私には信じられない。

その逆に、お金の失敗で人が人を殺し合うような、
自ら生命を絶っていく人が毎年何万人もいるような社会も、
私には認めることができないのです」

私はこの部分が川原先生らしいと感じ、感動しています。

≪川原≫ 有難うございます。

≪水野≫ 大変な状況の方を助けてこられた川原先生ですが、本書の出版を通して、
世の中の人に広く知っていただくきっかけになったと思います。

≪川原≫ 本書は私の10年間の歴史でもあります。
照れくさい部分もありますが、お金のことで悩み、人生を見失っていらっしゃる方に
元気を出して頂きたいと思います。

お金の失敗は必ず挽回できます。その方法は世間では教えてくれません。

≪水野≫ 私の本も川原先生に影響を受けています。
金融機関に都合の悪い情報は、表に出ない傾向があります。

特に事業再生や、個人の住宅ローンなどのリカバリーの方法は
金融機関から考えると都合が悪いからです。

悩んでいる時に気をつけるべきことは、再生を仕事にして儲けようという人に
引っかかってしまうということです。
本当にあなたのことを考えているかどうか、良く見極めてください。

≪川原≫ 事業再生コンサルタントをやると儲かると思っていらっしゃる方もいますが、
この仕事を10年やって私が感じているのは、やる仕事ではなく、
やらされている仕事だということです。

どこかで自分の失敗を糧に、これから失敗する人たちのサポーターになれという、
役割を負わされている感じがしています。

私が必要とされなくなれば、執着なくやめようと思います。

≪水野≫ なかなかそこまで言い切れる先生はいらっしゃらないと思います。

≪川原≫ 相手が苦しんでいる状態の人を助けるという事業再生の仕事で、
欲を出して、多くお金を頂こうとすることは、私の仁義に反します。

私もこれでご飯を食べていますので、費用はいただきますが、これで欲を出したなら、
きっと相手に伝わるでしょう。

事業再生コンサルタントが、何となく、儲かりそうだと思って始める人も多くて残念ですが。

≪水野≫ 溺れる者は藁を掴むと言うので、借金で首が閉まっている人は、
どんな甘い言葉でも飛びつく可能性があるので、誰よりも騙しやすいということがあります。

≪川原≫ 先ほども申し上げた通り、何人かの話を聞き、どの人に依頼するといいのか、
適切な判断をしてください。

≪水野≫ 甘いこと、上手い話しを聞くと乗りたくなるのが人情ですが、
私は川原先生に相談できたのは、とても運が良かったと思います。

≪川原≫ 私も縁のある方のお力になれれば、それで十分です。
意見や考えは、言わないと伝わらないので、私はこう思っていますということは
社外に伝えて行かなければならないと思っていますが、
あくまで、私とご縁がある方をお助けするという気持ちは変わりません。

≪水野≫ 私も本業である本を書くこと続けて行きますが、それが派生して、
現在出版セミナーを主宰しております。
本を出したいという人のお手伝いも、私が必要とされる限り、力になりたいと改めて思いました。

≪川原≫ 水野さんとは、同じ考えなので、ぜひ、ジョイントでセミナーをやりたいですね。
水野さんとのトークセッションや、会場の方からの質疑応答を受けるタイプのものであれば、
楽しく開催できそうです。

≪水野≫ それは嬉しいです。是非、やりましょう。
今日は素晴らしいお話を有難うございました。

≪川原≫ こちらこそ有難うございました。

(構成 金子 美子)