震災から早半年。遅々として進まぬ被災地の復興も大きな問題ですが、デフレ不況の上に震災と原発事故の影響を受けて暗雲深くたれこめる私たち自身の経済も大問題となっています。停滞する経済活動の中で、経営者やビジネスマンはこの苦境をどう乗り越えればいいのか。自分自身の経済をどう「復興」させることができるのか。
そのことをテーマに、事業再生のスペシャリストであり、『先輩!お金の相談にのってください!』(東洋経済新報社)の著者・川原慎一と、『震災後に倒産しない法』の著者・吉田猫次郎が、個人と企業の知られざる経済復興のポイントを熱く語ります。
「経営環境の変化」「金融機関の変化」「経営マインドで大切なこと」「キャッシュフロー経営のポイント」等、いずれも必聴の話しばかり。次のアクションのために、ぜひお読みください。
●INDEX ────
第1弾 (2011/9/28更新)
第2弾 (2011/10/14更新)
震災後、一般金融機関の動き
元に戻る復興ではなく、次の展開という復興
個人の生活防衛
第3弾 (2011/11/3更新)
これから被災地の人達にどう対応するか?
これからの東北 ―声を上げよう―
そのとき、コンサルタントのやるべきこと
第3弾 (2011/11/3更新)
これから被災地の人達にどう対応するか?
これからの東北 ―声を上げよう―
川原 被災地ではこれを機に転業とか起業しようという空気はありますか?
吉田 ないですね。東北は保守的な人が多いから。例外もありますけど、土地への執着が強くて、周囲の目が気になる人たちです。いい意味でも悪い意味でも我慢強いし、変化に弱いというか違うことをしたがらない。だから震災でこうなっちゃったから違うことやろうかっていうタイプの人たちは少ないですね。これが関西人だったら違ったかもしれないけど。神戸の震災のときは、昨日までは宝石屋やってた人が、中国人の泥棒に宝石盗まれて、次の日から産廃業者やってるとかありましたけど。
石巻やいわきは今でも信号も付かないし、市の方針としてここで再興されては困ると。ここは国がどうするかまだわからなくて保留状態だから、仮に事業始めるにしても周辺部で始めるしかないっていう状況でもあるみたいなんですよ。
川原 政府の決定を待っていたら何年かかるかわからない。何か起こしたい人が資金調達するには、まず現実的に声を上げることからでしょうね。先ほど話しに出ましたけど、ご本人の気持ちはどうなのかってことにも繋がって、お金とかどうのよりもマインドとして、「これがやりたいんだ。ここで復活したいんだ」って声を上げてもらうことがまず大切だと思います。声を上げないと周りにも全く見えないから。
吉田 最後に頼りになるのは自分しかいないわけですから、自己防衛をもっと徹底してほしいですね。例えば銀行の返済。こっちの道に行くかあっちの道に行くか決断がでない事業主がいるとします。日本人はみんな真面目ですから、それでも銀行への返済を滞りなくやろうとする。でも、復興のためを考えたら、それが必ずしも良いこととは限らないんです。返済を停めてでもキャッシュを貯めておいて、いざというときに自分の力で何かできるように心がけておくことも大切です。
川原 片や被災地以外の人たちは、何か応援したいんだけど、これからは「使い道のわからない」義援金じゃないよねってもうみんな思ってる。現実的には被災地のみなさんも施しじゃなくて自分たちで仕事したいんだって思ってる。声を上げるっていうのはそういう意味です。目に見える支援がしたい。働きたい、仕事がほしいと各自が声に出すことです。
後は融資の問題です。企業も個人も、いろんな形で東北にお金を出したいんだけど、果たしてどういうものにどういう形でお金を出すのがいいのかってことが、今一番ポイントになっている。政府もそうかもしれないけど我々一般人もそうでしょう。そこのところで真ん中に入って、我々民間人がパイプを繋ぐようにして、お金の存在と事業の存在を結びつけて如何にお手伝いができるかってことが一番大きなテーマだと私は感じています。例えば「クラウドファンデーション」のような、出資ではあるけれど万が一のときには戻さなくていいよみたいな気もちのお金もありです。どこにどう使われるかがわからない義援金じゃなくて、自己のリスクで「無駄になっても文句はいいませんよ。自分の判断だから」というお金の出し方も増えるでしょう。事業主も、「出資を受けたお金でこういう事業やります。リターンは普通であれば配当だけど、そうじゃなくて農産物であったり収穫物がリターンでありますよ」っていう形もある。そういうケースがこれから多いにあると思いますね。
吉田 出資ならビジネスの要素が残りますけど、義援金になると慈善事業になっちゃいますからね。
川原 そういうことだよね。この段階にこの夏からきっとなるよ。それは逆にいえば、より具体的でよりちゃんとした内容のものを如何にやるか、それに対してどういうお金を付けるか、どういうふうにパイプを作るかが具体的な課題ですね。
吉田 そういう仕組みができたら、東北の人にとっては初めてオープンマーケットの中からお金が自分のところに入ってくることになるのかもしれない。その時は自分の情報も開示しなければならない。ある意味ソウシャライゼーションというか。農業をやってる多くの人は農協に依存してて、農協でお金も借りて、農協から出荷していた。資金調達も農協べったりだったんです。かと言って儲かっているわけではなくて生かさず殺さずの、江戸時代のようですよね。
川原 そうだったの?
吉田 だけど今回良い意味でそれがぶち壊れつつある。完全に一回壊れちゃった方がいいかもしれない。農協に依存しないで、消費者にダイレクトに繋がる農業を模索したほうがいいんじゃないかな。
川原 じゃ被災地の農業ってスクラップアンドビルドの状態になってるの?
吉田 なりつつありますよ。山形のさくらんぼなんて前年比ですごい下がってますから。あの辺なら放射能の影響はそんなにないはずなのに、結局風評被害みたいなもので観光客も減ったし流通も減って、すごい落ち方をしてる。だから自主流通を考えてるってことは何かで見ましたよ。
川原 それは今まで農協が独占していた流通を、今回の被災で自主流通は見て見ないふりってこと?
吉田 逆にそんなに規制はなかったのに、今までは任せっきりだった農家の人たちが、自立心が芽生えたと言えると思います。それ自体は良いことだと思う。農家の人たちが目覚めるきっかけになればね。
川原 猫さんも被災地に行ってるから一対一対応というか縁結びが出来る可能性があるってことですよね。具体的に形になるものって見えてるの?
吉田 そうは言ってもなかなか農家と農協の構図は崩れないとは思うんですけど、今まで農協の体質に問題があり過ぎたし、農協の問題ってテレビとかで取り上げようとしないんですよ。大事なスポンサーさんだし。なかなか公に出ない。農協って監督が不在なんですね。農協の金融部門は農水省も金融庁じゃないからノーチェックに近いんですよ。正しい監督官庁は県庁なんですけど。以前うちのお客さんで農協がメインバンクで競売にかけられてしかも連帯保証人であるお父さんお母さんが年金手帳を取られちゃったっていう酷いケースがあったんですよ。それを金融庁に言ったら「うちの管轄じゃないです」って。県に言ったら「それはたぶん金融庁だと思う」って。農水省に言ったらけんもほろろで。マスコミに言ったら「うちじゃ取り上げられないですね」って。結局実質不在って感じで大問題なんです。それに農家の人たちみんな素直だから、農協に「連帯保証人5人つけてください」って言われると言うこと聞いちゃうしね。
川原 そういうとこでは一回見直しが必要だよね。ただ、まさにそういう環境でやってきた人たちが、今自主的な流通を求めても現実的には難しいわけじゃない。だから外部の力が必要ですね。
吉田 第一次産業には高齢者も多いし、変えようって気持ちがあっても何をやっていいかわからない。きっかけもなかなか作れない。
川原 じゃ農産物でいえば、お金の問題と流通の問題は付いてくると。
吉田 そうですね。ブレーンというか情報の問題とでも言うんでしょうか。そういうものも必要でしょうし、橋渡し役とか、コーディネーター役が必要になってきますよね。
川原 だからまず「相談しよう行動を起こそう」が大事ですね。でもこれが一番難しいところでもある。猫さんの本の28Pに書いてあるところだよね。僕の本の76Pに書いた「失敗に負けてしまう人(現実を直視しない。失敗を認めない)」も少し似てるとこがある。現状を把握して人に相談するとか行動を起こすことは、容易いようで意外と本人にとって難しいからね。
吉田 なかなかできないですよ。相談すれば片付く問題でも、相談することができない。
川原 ここら辺は僕も経験があるんだけど、それってどっかで「明日でもいいや、今日じゃなくてもいいや」って思っちゃう。どこかで、相談することは人に恥をさらすことだって気持ちがあるのかな。事業再生において一番難しいのってここかもしれないよね。一旦相談してしまうと、目からウロコが落ちるようなこともあったり、思い違いだったり、そんなに心配しなくてもいいんだってことがあるんだけど。
吉田 相談できなかった人が一度相談し始めると堰を切ったように話出して、気持ちも変わっていきますよね。
川原 そうそう。
吉田 僕自身、債務に押しつぶされそうな時は誰にも相談できなかったです。相談は処理されるとイコールだったんですよ。12年くらい前の僕の中では、相談する人は弁護士しかいないと思ってたし、弁護士に行ったら処理されるって。何をどう処理されるのかわからないけど、とにかく処理されると。処理されるっていうのは敗北を意味する。一旦破産でもして敗北者になったら日本では二度と社会復帰できないっていう先入観があったから、相談なんてとんでもないって。債務整理なんて考えないで、稼いで返すんだって。それしか考えがなかったから、どんどん道が狭まっていって、目の前真っ暗でした。
川原 僕は自分の債務問題を10年前に猫さんに相談して、そこから事業のターンラウンドが始まったわけだけど。確かに相談する前は、解決の方法は頑張るか破産しかないのかなって二択状態でした。でもあの時猫さんが言ったのは「破産と全額返済の間にいくらでも方法はある」ってこと。債務者って破産するか全額きちんと返すかどっちかしかないって思ってるから、破産が嫌なら全額返すっていう選択肢だけで、真ん中ってないと思っちゃうんだよね。
吉田 期日どおり返すか、死ぬか。そこまで思い詰めてる人も多いですよ。
川原 相談する相手っていうことを猫さんの本ではっきり書いてあるよね。法律系の人、不動産系の人、会計系の人。猫さんも10年以上の経験を持って、事業再生のコンサルタントのリーダーとして提言してるのは、それぞれの専門家の人って必ず自分の専門地域で物事を片付けたがる。もうひとつには、我々のように事業再生という領域で生きてきた人間にしてみたら、あまりにも酷い人もいる。今回の本では業界のリーダーとして踏み込んで書いてるよね。オピニオンリーダーとしての役割をこの本で発揮してる。今まで言わなかったこと言ったよね。
川原 今回の対談はネット配信で、東北の方もたくさん見てくれていると思います。何か先々、再生復興のムーブメントの中で、何らかの方法で一緒になって力になりたいという思いからこの対談を企画しました。
再生事業をやっていて、何も考えられないパニックの状態から、今はいかに生きていくかっていうことや事業の再生ってことに徐々に目が向き始めてきている。まさに今そのタイミングだと思うんですよ。政治も公の復興策もまだほとんど具体的にない。だからやっぱり民間の現場が少しずつ声を上げていくことが大きなものを動かすきっかけになるかもしれない。弁護士のグループとかちょっとした事業再生の専門家が行って勉強会開いても、全然人が集まらないからこれは意味ないけどね。
吉田 現地で行われたある無料相談会で、そこに名だたる専門家が6、7人いても、来た相談者が5人。それは僕に言わせれば高いところに止まって下を見下ろして「君たちいつでも相談に来たまえ」と、そういう姿勢だから来ない。自慢じゃないけどうちの勉強会6月19日にやって、19人来ました。
川原 東北の人の気質だと思うけれど、カウンセリングにしても言葉だけでやる人はだめで、体触ってあげたり揉んであげたりするとすごくしゃべり出すってあるよね。
吉田 そう、腰を低くして。話を聞く方に力を入れる。再生コンサルタントって経営コンサルタントと違って人間で言えば医者みたいな要素がすごく強いから。医者はヒアリングして患者さん目線に立たないといけないでしょう。患部だけ臓器だけしか見られなくて、人間の痛みが見られないとそれは医者として二流三流ですからね。
川原 東洋医学みたいなのも必要だよね。ここ2、3ヶ月の活動見てると「事業再生コンサルタントです」って入って行ってもだめなんだよね。ボランティアの人たちや、地元の苦痛、これから必要なものを聞ける人たちと組んでやらないと「事業再生でございます」って足を踏み入れたら相談者が来るってことは現実的にありえないでしょう。
吉田 相談する人は例外なく弱っていますからね。かつての僕もそうでしたけど。弱っている人って、先生とか名が付く人はすごい高いところに見えて、発せられる言葉も非現実的に聞こえるんですよね。処理されるような気になる。ある意味屈辱的に感じたり。その辺を配慮しないと。
川原 うちの家内がケアマネージャーなんだけど、その仕事を見ていると痛み共用タイプです。腰が痛ければ「おじいちゃん腰痛いねー」って、一緒に痛みを味わうんです。ところが往々にして経営コンサルタントって「どこが痛いんですか?ここが痛いの?じゃその方法論を見つましょ」っていうわけですよ。痛みをなくすために何をすべきかって。でもそれだけだとなかなかなうまくいかなくて、ケアマネージャーの「痛いよね。辛いよね」ってことばで「あぁわかってくれるんだ」って。そこのところがあると心を開いてくれる。だから「さぁじゃ痛いとこはどこ?これは無理だな」だと、だめですよね。
吉田 後お客さんでこんなこと言ってる人がいました。溺れている人がいるとして、悪いコンサルタントは溺れている人に正しい泳ぎ方を教える。でもそれじゃ意味がない。溺れている人をまず救い上げて冷静にさせて、それから正しい泳ぎ方を教えるならいいけれど。だけどそうじゃない人があまりにも多いですよね。
川原 すごく困ってる人の前でホワイトボード持って行っても何の意味もない。まず膝を折って痛みを知る。場合によっては何も言わないで聞くだけで帰ってくる。この問題で最終的に一番何が問題かっていうと、ボランティアとしてどこまでできるかです。ボランティアですってやっておいて途中からビジネスですってやると一番信用を失くしますからね。ボランティアなら最後までボランティアでやらないと。そこが現実問題としては一番大きいと思います。
第2弾 (2011/10/14更新)
吉田 震災後の一般金融機関の動きはどうなっているかというと、僕の実感としては、関東以西、東北も含めてなんですが、この状況下で地域差はあるんだけど、被災地は停滞気味。貸すことに関して銀行は、保証協会の保証付きや、リスクがないのものもあって、割と簡単に貸してくれる傾向が強いと感じてます。
変わったのは回収の方です。例えば担保権、競売とか。そういうのは優しくなってるなって感じました。ことに宮城県や福島県、茨城県北部とかの方は。それ以外の東京都とか神奈川とか名古屋大阪、その辺はあまり変わらない。震災による影響はそんなにないかなと。それよりも金融円滑化法の影響だとか、震災の前々年のリーマンショックとか、全部ひっくるめたいろいろな影響は感じてますけど
。
同業の人と話していてよく耳にするのは、銀行も顧客を選別に入っている。リスケ(リスケジュール 返済が困難になった時に、金融機関に借入条件の変更(減額)をすること)とか、支援に応じる会社と応じないで切り離そうという会社の選別に入ってる。もうこの会社は今後付き合わなくていいやって、だんだん見切りがはっきりしてきてる。金融庁もある意味それを認めてるんじゃないかと。ゾンビ企業の排除とでもいうんですかね。そういう傾向にこれからなっていくんじゃないかってよく話してますね。
川原 そのゾンビ企業っていう表現を債権者はよく使うんですよね。要は生きてるか死んでるかわからないという意味。でも僕はその言葉に疑問を感じるんだよね。そこにちゃんと雇用がある、売上げがある。売上げがあるってことは物やサービスが提供できて人が喜んでいるわけだし、人を雇えてるってことは、その人やその家族を支えてるってことだから。
吉田 売上げがあるってことは、人を雇ってるわけだからそれだけでも地域貢献ですよね。それに仮に利益が上がっていなくても、今どき存続しているだけで立派な会社だと思います。倒産してなくて店が開いてれば、それは立派に存続って言えますよね。
川原 キャッシュを産み出して黒字じゃないと企業としての価値はないっていうのは、確かにそうだと思います。でも実際、利益が上がったり下がったりしているところが多いわけですよ。今月は黒字、来月は赤字。それが中小企業の現実。それでも継続できているってことは、すでに一定の価値ですよ。それを金融機関から見てゾンビ企業っていうのは如何なものかなと。問題は雇用です。雇用してるのにゾンビ企業っていう言い方は嫌ですね。大切なのは、当面のキャッシュフローを維持してお金の管理がきちんとできるってことです。地域の中小企業はどうしても財務や管理に人を割くってことができてないから、流れるままにお金の管理をやってきてるところが多いと思う。無意識にお金のやり繰りをやって来ていて、意識的にキャッシュを維持しようって現実的にはできていないと思うんです。そこのところをきちんとしていくことが重要ですね。
吉田 経営自体自転車操業を避けては通れないですけど、自転車操業を一回止めちゃうとバタッと倒れちゃうようなやり方をしてきているところがほとんどですからね。そうではなくてたまに回転を止めても蓄電池が動くような、そういうプール資金がほしいですよね。これから益々不測の事態っていうのは起きやすいですから。現金を残しておくということに集中しようということです。
川原 1ヶ月のうちで一番現金がないところってどこなのか、月末なのか月の真ん中なのか。そのときに売上げや経費の何ヶ月分のお金があればうちの会社は順調に行くっていう数字を掴んでることが大切です。猫さんも本(『震災後に倒産しない法』)に書いているように、苦しくなってくると中小企業といえども財務的なBS、PL、CF(キャッシュフロー)の数字が掴めているかどうかが意外と勝負になりますね。
吉田 銀行も貸すか貸さないかはひたすら経営の数字で判断してますから。経営者の熱意だとか努力だとかは関係ない。だから数字に敏感で、その数字を自分の会社の決算書に反映している会社は、銀行からもダイレクトに評価されやすい。数字は今や無視できないですよね。
川原 中小企業の方から金融機関にどういう説明していくかも大事です。数字で説明できない経営者が多すぎるからね。「売上げどうですか?」「あぁいいよ」とかね。「今月悪いね」とかそういう言い方はできるんだけど「対前年比どのくらい悪い」とか「この分岐点から見て何%悪い」とか、そういう言い方をできる経営者が少ない。
吉田 売上げなんか本当は一番説明できなきゃいけないのに、それさえも「うちは年商5億あります。リフォーム部門がいくらで、それ以外の部門が何%で」軽度のことすら言えない人がたくさんいる。これは問題ですよね。売上げだけじゃなく、もっと深いところで「うちの資本利率は8%しかないから、これを当面15%に上げるのが当面の目下の課題です」とか。それくらいは言えないといけないんですが、それ以前の問題で、売上げさえも「去年は確か3億行ったかな、行ってないかな」みたいなことしか言えないんじゃ金融機関の信頼は得られませんよ。
川原 逆にそういう人がいざという時にパニックになりやすいんです。そうならないためには、対策対照表を完全に把握することは確かに難しいけど、シンプルに「うちの会社って普通で行ったら税引き後いくら儲かるんだ」くらいは掴んでおかないと。僕らはPL(企業・事業体などのある一定時点(決算日や開業時など)の「収益」とそれを得るために要した「費用」を明記し、その期間における「純利益(赤字の場合は純損失)」を算出した計算書のこと)の一番下から見て、それから徐々に5つの利益を見ていく。数字で仕事を考えられる人は比較的再建していく道のりを作りやすい。被災地の人のことを考えて言えば、猫さんの言ったように選択肢をいかに見極めるか、選ぶより先にまずどの選択肢があるかを知ることが重要ですね。特に困ってるときはAll or nothingでものごとを考えやすいですからね。
吉田 二者択一になっちゃうんですよね。
川原 僕も本(『先輩!お金の相談にのってください』)に書いたけど、失敗すると人は元に戻ろうとする。その時まず「元に戻れるの?」って不安になる。それは恐らく今回の被災者の皆さんも同じだと思います。震災前の家族、町、仕事、全ての意味で元に戻れるの?って考えたら、すごく不安だし憂鬱ですよ。でも冷静に一歩引いてみたら、復興とか復旧って完全に元に戻ることじゃない。元に戻ることが良いことかもわからない。元に戻ることが復興じゃなくて「次の展開って何かな?」っていう次の選択肢を考えることが大切だと思います。数字的に言えばV字やU字で元に戻すんじゃなくて、もっと現実に照らし合わせて、売上げが減っても回していける企業の体質作りがいかにできるかっていうことですね。そっちの方が生き残るには大切なことですよ。
例えば、石巻で後3年頑張れば創業100年の老舗の料亭が流されて、従業員はもう雇えないから一度解雇させてもらって、失業保険で半年は過ごしてくださいと。でも経営者がなんとか続けようとして、解雇された従業員たちもボランティアで働きに来てくれて、ボランティアに来る人とか作業してる人にお弁当を1500円で売ってるんです。今までは店で高い料理を出していたんだけど、今は1500円のお弁当に徹して、当面はやっていく。つまり業態転換ですよね。その状況において何ができるかを見極めて、いかに元に戻るかを考えるよりも、どうやって継続していくことの方が重要なんです。
吉田 後大事なことは、僕もよく言っている「倒産の三要因」。いわゆる会計学的にいうとB/S(貸借対照表)、P/L(損益計算書)、CF(キャッシュフロー計算書)で、これに倒産の三要因を落とし込んでいくと、ひとつは債務超過ですよね。もうひとつは万年赤字体質。3つ目が資金繰り。この三つが倒産の三要因なんですけど、みんな資金繰りに詰まって倒産したって、資金繰りだけで見てるんです。確かに資金繰りが原因というのは多々ありますけど、原因を突き詰めていくと債務超過だったり、必ず何かと連動してるんです。今回の震災とか今後続くであろう不景気でもそうで、資金繰りをいくら上手にやっていても、それは資金繰りでしかない。もっと原因を突き詰めて債務超過をいかに解消するか、自己資本をどのくらいアップするかも大事だし、それ以上に黒字化っていうことも大事。だから今、短期中期長期のテーマを設けないといけないと思うんですよね。短期では、資金繰りで生き延びていきましょう。中長期では、是が非でも黒字化しましょう。黒字化も減収増益で売上げが減っても回していけるような体制も必要だけど、ずっとそれだけじゃ夢がないから長期的には売上げも上げていけるように何か夢を持って期待を掛けましょうと。そういう考え方の組み方が如何にできるかが大事ですよね。あまり目先の資金繰り資金繰りってなると、どうしてもダウンサイジングばっかりで夢がなくてそのうち嫌になっちゃいますから。やっぱり夢は持ち続けてほしい。
吉田 現在の日本経済は、長く停滞してることは明白だし、なぜか円高も続いているから製造業を始めとする業種はどうしようもないわけです。そんな中で個人の生活防衛という意味では、家は買わないことです。家計も企業の決算書の読み方に相通じるところがあるんですけど、固定資産ばっかり持って流動資産と現金をあまり持っていない人ってやっぱり潰れやすい。固定資産はいくらあっても現金化しにくい。資産をたくさんもってても実際に金回りが悪い企業はたくさんあります。個人でも全く同じで、住宅ローン付きの家を持っていても、ローンはすごい残ってて現金なかったら、ちょっと歯車が狂って、例えば勤めてる会社が給料減ったりリストラになったら、たちまち歯車が狂っておしまいです。
川原 それは僕も本に書いたけど、なかなか個人で自分の財務をバランスシートで考えることが出来る人は少ないですよね。流動化できない資産ていうのは、資産じゃないというくらいに思ってないといけないと思います。いざとなったらどういうふうに流動化できるのかって把握できていないと、やっぱりピンチに弱い。猫さんと一緒で、僕も不動産は根本的に持つものから使うものになってきてると考えています。逆説的にいうと、今回の震災で地盤が沈下したとか、不動産が動産になった。だから何かがあったときに自分はこれをいくらに代えられるのかっていう危機管理の視点を持っていないと。一番良くないのは、いまだに不動産神話をなんとなく信じているとか、今金利が低いから買っておこうというパターンで、個人の生活としては資産はいつでも流動化できて、万が一のときにはどれだけ現金化できるかということが大事なんです。
吉田 家を買うなとは言いませんけど、余裕を持って買ってほしい。手元にある程度残したうえで資金計画を立てるべきです。
川原 僕の本に「財務三表で家計を見る」って書いたんだけど、これは反響がありましたよ。友人から電話があって、嫁に本読ませたら「住宅買ってローン組んだらそれは債務超過になるの」って驚いてたって。財務のことちょっと知ってる人には、当たり前なんだけど。
吉田 車と変わらないですもんね。買ってすぐ値が落ちる。車なんてたった1年で100万くらい下がるのがざらだし。廃棄消費財みたいなものですよ。
川原 車は400万で買って1年で100万落ちて、売って300万で、一年で100万使ったことになるんだけど、どうもそれが理解できない人が多いですね。
吉田 言葉通り、「不動産」だと思っちゃうんですよね。ほんとに価値が落ちないものだと思ってしまう。
川原 買った後の値段を意識しないことの理由としては、流動化させるのは特殊なことがあったときにしか起こらないから、時価を掴む必要なんかないんだって思ってる。そういう考え方は、社会が右肩上がりのときはいいんですけれど。
吉田 奥様の方がマイホームほしいっていう気持ちは強いですよね。それで無理してローン組むんですよね。計画も右肩上がりの時に組んじゃって、旦那さんが失業するとかリストラに合うとかいう考えがない。定年まで勤めて退職金もらって給料も間違いなく毎月25日に振り込まれるってことを元に立てられた計画ですよね。家を売るっていうのは初めから考えにないし、35年後にはきちんとローンも払い終わって、その後晴れて借金もないマイホームよねって。でも現実には築35年のボロマンションになってるわけです。価値があるかないかもわからないですよ。この際、日本人は不動産に対する考えを変えるべきですよね。
川原 最近は極端な円安になるとか、国債がいよいよ飽和状態になるとか、日本の財政政策が破綻してるのはみえみえなんだから、高金利に振れるリスクを考えておかないといけませんよね。
吉田 個人の財政状態で言えば、まず収入が減る。すでに平均年収とか明らかに減ってます。僕自身はまさにバブル期入社世代なんですけど、大学生のときサラリーマンの平均年収は700万台でした。ところが今のサラリーマンは400万台らしいですよね。600万越す人が全体の5%くらいしかいない。それくらい日本国民の年収が下がってる。それにこの状態がまだ続くんじゃないかと思います。収入が減れば当然消費も減るし税収も減るし。
川原 それに一番恐いシナリオは不況下でのインフレ、所謂スタグフレーションです。そうなったら、個人資産は根こそぎやられます。ただ僕は、個人資産と借金のバランスが取れていれば、いたずらに恐がることはないと思うんです。
吉田 これから起こるインフレについては、昔みたいな簡単なインフレ、全部の物価が上がるとか、そういうのは起こらないと思います。もっと複雑なインフレ。家賃相場は下がって、お給料も下がるけど、ガソリンは異常に上がるとか。今バブル期より後に相続対策とか投資目的で賃貸マンション建てた人が多すぎて、賃貸物件は供給過剰気味で家賃が安いんですよ。23区内でも選びやすくなってる感じがします。そういう複合的なインフレが起きると思いますね。
川原 現在の日本経済や経営状況と3月11日の東日本大震災の影響は切っても切り離せないけれど、猫さんは現地に何回か行って、どんなことを感じていますか?
吉田 相談件数が意外と少ないですね。正確に言うと少なかった。地震から最初の三ヶ月間は皆無に等しかった。それどころじゃなかったんでしょうね。いわきの方が先々週相談に来たんですけど、3月末までは仕事どころじゃなかったって。社員とか親戚も生きてるかどうかとかもわからないし、4月5月は目の前の処理に必死で、6月になってやっと「やばいぞ、このままじゃせっかく生き残ったのに会社が潰れるぞと」と我に返ったと言ってました。建設業はリフォームとかもやってるから特需はあるんです。けれどいくら仕事が入っても先立つものがないからその仕事ができない。そういうことに気が付いたのが6月だったそうです。
川原 今までは命を守ることが必死で、会社の資金繰りとか経営まで気持ちが回らなかったってことだよね。
吉田 そうそう。業種別にタイムラグもあって、震災後すぐに倒産という現実に立たされるところもありますね。目先のことでそれどころじゃなかったっていうのは建設業関係で、6月の終わりくらいから必死に相談に来てくれてます。
川原 その相談者は、今後仕事が入ってくるとか将来の展望が見えてるんでしょうか?
吉田 完全に見えてます。でも先立つ資金がないんです。だから今、政府がつくった緊急融資制度に乗っかって、借りれるだけ借りちゃおうと。それが共通の見解ですね。借りるだけ借りちゃって、返すことは後で考えればいいから。
川原 まず事業が継続できなきゃ何にもならないからね。
吉田 今いわきはどういう業種が儲かってるかと言うと、簡易宿泊所、ビジネスホテル。復興とかボランティアのための協力会社の作業員がいっぱい来てるので、去年オープンして閑古鳥が鳴いてたいわきの駅前のビジネスホテルなんて何ヶ月先までいっぱいだって。だからって、そういうところに投資して部屋を増やそうにも、これが何年続くかわからないからできないですし。それが、最近川原さんがよく言っているバーンレート(会社の資金が底を尽きるまでの猶予時間を計算するための指標)っていうことですね。
川原 全くそういうことだよね。キャッシュ・フロー(現金の流れを意味し、企業 活動によって実際に得られた収入から外部への支出を差し引いて手元に残る資金の流れのこと)を中心にどうやって資金繰りを進めていくかをまず最初に考える必要がありますね。言葉は悪いけれど、借りたお金でもいいからキャッシュで経営を続けていくことを重要視しないと。ただ今の話だと、宿泊施設っていうのは一定期間好況が続くと思う。少なくとも三年は続くんじゃないかな。復旧復興には外部の力が絶対的に必要だからね。とにかく現地に来れば宿泊することは誰にとっても必要なファクターだからね。
吉田 聞いたら東京電力、原発への協力会社の人たちも結構泊まっているみたいです。いわきなんて原発30kmの距離ですから。道一本で車で1時間で行けますからね。
川原 だからって、ホテル旅館業界に新たに大手資本が入ってくるかと言えば、やっぱり復興の方が先にあるから難しいよね。復興のための宿泊設備なわけだから、復興の前に宿泊施設を作るっていうのは少し違うからね。僕はこれまで、水戸、日立、いわき、平あたりの経営者の事業再生のお手伝をしてきたんだけど、震災直後には連絡取れる人も取れない人もいました。先々週には、顧問先の白河の工場に行ったんだけど、盛土(もりと)っていって後で土で盛ったところは建物がぐちゃぐちゃでした。切土(きりと)っていって、山や丘を削って建ててある工場は無事なんだけれど。
吉田 被害は局地的なんですよね。北に行けば行くほど酷いんじゃなくて、やっぱり地盤ですよ。同じ福島でも郡山はひびが割れたとかの被害はないけど、すぐ近くの白河は南なのに結構屋根の崩れ方とか家の傾きかたとかがすさまじかったり。あと茨城県の霞ヶ浦とか、元々砂浜だったところを無理やり住宅街にしちゃってるから被害が大きいです。牛久の辺りもそうですよね。
川原 被災地の被災の度合いにもよるけど、土建業、建設業の経営者の方たちは、被災から3ヶ月してもう一回経営者マインドを取り戻してる感じはしますか?
吉田 僕が相談を受けた方のお一人は、年商5億ある地元ではかなり大きい建築屋さんなんですけど、今は生き残ることだけじゃなくて、攻めに考えてますね。不謹慎かもしれないけど、今チャンスだと。資金を用意できるうちに用意して、仕事も取れるだけ取って、それも質の高い決め細やかなサービスを提供しようとしています。
川原 年商5億の事業体が震災後3ヶ月間は収入ゼロだったということですか?
吉田 1ヶ月間はゼロでした。4、5月はこれからどうしようかなってもやもやっとしていて。とにかく目の前の現実的な処理がいっぱいだったようです。
川原 そんなときに気持ちが前に行くべきか行かざるべきか、もやもやしてる経営者って今でも割と多いと思いますね。僕らからのアドバイスも難しいです。僕らの立場って結局サポーターだし、どんなにこっちが言っても相手の気持ち次第ですからね。あまり言っても却って相手が辛くなることもあるし。相手の気持ちが盛り上がるのを待っていないといけない。いろいろなケースが出てくると思うけど、あれだけのショックを受けて気持ちが前向きになるところまで行くのは、ちょっとやそっとのことではないですからね。
吉田 そうですよね、地域によっても全然違うし。例えば神戸の大震災のときは建て直せば復興ができたけれど、福島県だったらどうかってことですよね。放射能がこれから何十年あるいは何万年続くかもわからない。だから一概にそこに再投資して復興復興ってやっていくのがいいのか、それともいっそのことその土地を離れて別の土地でゼロからやり直すのがいいのか、すごく悩ましいところですよね。
川原 政府が作った制度は、現場のことがわかってない。机上の論理で作ってる気がしますね。実際に政府なり国なりがポイントポイントに人を派遣するべきです。それで現場の情報を吸い上げて中央に上げていくようなことやらないと、やっていることと、現場の本音がずれてますね。僕のところに相談に来てるイベント会社の社長さんなんかは、3月11日過ぎに全部の仕事が一旦キャンセルになったって。年間10億売上げある会社だったのに。
吉田 2、3億円キャンセルということですか?
川原 とにかくまずはキャンセルと言われたそうです。つまり売上げがゼロ。見えるのは社員の給与とか経費等の出て行くお金だけ。もうパニックでありとあらゆる人材を切るは、自分の給料はゼロにするは、奥さんには実家に帰られちゃうは。ある日突然目の前が真っ暗になったわけです。
吉田 変な言い方をすると、ある程度失敗慣れをしてる人はこういうことが起きても「前回の失敗はレベル30のだけど今回はレベル100か。ちょっと身構えないといけないな」って感じで、免疫があるんですよね。だけど日本って未だに平和な国だから、サラリーマンでも中小企業の経営者でも、レールに乗れていた人、失敗せずに来た人がすごく多い。そういう人が初めてこういう事態に直面すると、どんな屈強な人でも人生経験豊富そうに見える人でも弱りますね。
川原 そう。どんな苦境でも、選択肢はたくさんあるんです。ただ今回の震災は、ある日突然来ちゃったからね。我々が今まで扱ってきた事業再生っていうのは、ある程度売上げが下がってきたとか徐々に徐々に事態が悪くなるパターンだったけれど。今回の震災の問題っていうのは、ドカーッといっぺんに来ちゃった。
吉田 そうなんですよね。売上がズドンと一気に落ちる経験はなかなかするものじゃないから、どんな有能な経営者もパニックになりますよね。
川原 今回のこのイベント会社の例でいうと、仕事が一旦全部キャンセルになって一週間くらい経ってから、世の中のムードが「自粛がいいわけじゃない、自粛では復活しないんだ」ってなってきた。イベントやることに関して社会が理解して、むしろやるべきなんだって。そうするとお客さんの方から「もう一回改めてやりましょう」って夏頃からそういう傾向に戻ってきた。だからコンサルタントとしては、いかにバーンレートを把握してキャッシュフローが続くようにするかってことをまず気を付けましょうと言い続けた。そうやって事業が潰れさえしなければ、世の中のムードの変化と平行して受注も増えていったんです。とはいえ、このケースは東京のことだから、現地となるとまた別だし、話に聞くと特徴的なのは農業と漁業だよね。猫さんは漁業も勉強されてるけど、漁業農業は特殊だよね。
吉田 はい。お金の回収も年に一回という場合もあるし。サイクルが全然違いますからね。
川原 震災以前も、漁協と農協については我々も今までアンタッチャブルだったからね。
吉田 農協なんて担保つける基準もなにも全然違いますからね。農地を担保にしてるんですが、農地ってそもそも担保価値基準が全然違うんですよね。
川原 金融機関の企業への融資基準は長い間変わりませんでしたが、今回の震災だけでなく、この長引く不況で日本社会の有様もずいぶん変わって来ています。経営マインドや社会の仕事に対する見方のマインドも変わりましたね。債務償還の年数とかもだいぶゆるやかになったし。ただ言えることは、そこの部分だけをゆるくするってことだけが問題ではなくて、金融円滑化法があるわりには、本質的に経営環境がどうしたら良くなるのかってところまでは行ってないんです。5年で完全に債務の償還をする目標を立てろといっても、事業って伸びれば伸びるほど債務も増えていくこともあるわけだから、現実的には厳しいこともありますね。
吉田 債務を償還しなければいけないって、ある種の脅迫観念ですよね。それは現実的ではないと思うんですよ。債務と共存していくっていうのが、本来正しい自然な姿であって、借金を排除しよう、無借金経営をしようっていうのは土台無理がある。借金も資本も調達には変わりないわけですから、規模拡大しようとすれば比率の違いはあれど借金は絶対に避けられない。だから借金はあっていいんですよ。無借金経営を目指さなくても比率さえ下がって行けば充分上出来だと思うんですよね。今回被災された経営者の方、あるいは被災地に住むビジネスマンの方たちが、自分たちの復興を考えようというときにアドバイスしたいことは、これはいつも言っていることですけど「あなたには選択肢がひとつやふたつじゃなく、たくさんあります」ということです。「どんな逆境でも、まだ道はいっぱい選べるんだ」と。可能性ゼロとか、救いようがないとか絶対に思わないでほしい。
川原 その通り。債務や二重ローンのことより、自分の仕事を継続すべきか?、それともいったん収束させて新たな道を模索すべきか?家族の為にはどうあるべきかを優先して考えるべきです。債務の問題は必ず解決できるし、借金していることが悪いことではないから。
川原愼一
(株)SKIビジネスパートナーズ代表取締役
ベンチャー起業家を経て、倒産、経済破綻を経験。債務問題を自力で解決する過程で事業再生のノウハウを学び、2001年よりコンサルタントとしての活動を開始。現在までに数百社の再生相談に対応。個人債務者から年商数百億円規模の企業のM&Aまで、様々な成功事例を持っている。
吉田猫次郎
株式会社NEKO−KEN代表