事業再生に取り組む者にとって、「サ−ビサ−」と言う名は必ず耳にする言葉であり、良いにつけ悪いにつきけ興味のある存在だと思います。
1999年2月、増大する不良債権に苦しむ金融機関を救済するために、「債権管理回収業に関する特別措置法(サ−ビサ−法)」が制定されました。
バブル崩壊後の90年代、金融機関は苦境に陥った融資先の企業に対し、債権放棄よる救済を行おうとしても、税法上放棄額が「寄付金」と見なされるため損金処理がスムースに行えませんでした。
そのため、銀行の不良債権は増大し続け、金融機関としての機能を大きく低下することとなりました。そこで、銀行による回収が困難となった債権をサービサ−に「売却」することによって、不良債権の損金処理(債権売却損)を可能としたのです。
しかし、「債権回収屋」と言うと暴力団的なイメ−ジが色濃くつきまといます。その参入を防御するために、法律の下で回収会社を許可、監督し、更に、違法な取立てから債務者を保護することを目的としてサービサ−法が制定されました。
サ−ビサ−としての許可を得るには、@資本金が5億円以上、A取締役に弁護士を1名以上選任、B暴力団等の参入排除措置を講ずるなど厳しい制約があります。
また、条文には威嚇行為や代理弁済要求など不当な取立て制限する条項が定められています。
現在、凡そ100社のサ−ビサ−が営業しておりますが、その出資母体は金融機関系、ノンバンク系、不動産系や投資ファンド系などが中心です。
何故、銀行が回収できない債権をサ−ビサ−は回収できるのでしょうか。
実は、銀行はとてつもなく安い金額で債権をサービサ−に売却しているのです。ですから、銀行は債権の大半が損失となっています。しかし、銀行は損を出しても不良債権を処理し、財務の健全化を図る方が遥かにメリットがあるのです。
では、安い金額とはどれくらいなのでしょうか。実は良く判りません。銀行は、債権を債務者単位で売却する訳ではありません。何十億、何百億と言う単位で、ごちゃまぜ(バルク)で入札に掛けて売却します。場合によっては1円と言う債権もあるかも知れません。銀行にとって回収不能な債権ほど手放したいと考えているからです。
一方、サ−ビサ−にとっても、債務者からそこそこ回収できれば利益が出る程度の買取価格でなければビジネスとして成り立ちません。
これらの仕組みから考えると、債権(債務)がサ−ビサ−に売られると言うことは、実は債務者にとっても債務額を圧縮できるチャンスであると言えます。
では、銀行に債権の売却をお願いしたら良いのでしょうか。ところがそうは行きません。
債権を売却すると言うことは、銀行にとっては売却損が生じます。収益力の高い銀行はその売却損は吸収できますが、第二地銀や、信用金庫などの中で体力の弱い銀行にとっては売却に踏み切れないところもあります。売却の可否は銀行の都合によって決まるのです。
もちろん、銀行に比べますとサ−ビサ−の回収手法は厳しいものがありますし、債権全額について求償権を有しておりますが、債権がサ−ビサ−に売却されることは必ずしも企業経営に悪影響を与えるものではありません。きちんと事業状況や支払能力を説明して、事業継続が可能な範囲で合意することが大切です。
ひとつ気を付けねばならないことがあります。
サ−ビサ−との間で支払額について合意が成立すると、残債務額は放棄されます。しかし、放棄された金額は『債務免除益』として税務上「利益」と見なされ課税されることになります。売上と違って、利益が出てもお金が入って来る訳ではありません。債務は減ったが税金を収める資金手立てが必要となりまので、事前の対策が必要であることも忘れずに。