平成21年12月に金融円滑化法が施行され、中小企業にとっては事業再建のために時間的な猶予を得ることができたことは少なからず有効な法案であったと言えます。
一方で、金融機関にとっても、不良債権の処理を先送りすることができ、この間に財務体質の改善を図れたことは極めて重要であったと考えられます。
そうしたことから、この間においては金融機関との関係は比較的円満かつ緩やかな関係を維持され、条件変更等についても債務者の意向がかなり反映されてきたと言えます。
たた、その法律も25年3月には終了することは確実と考えられます。
前述のとおり、今は金融機関との関係は緩やかではありますが、この間においてより経営の安定化を高める対策を講ずることが重要と考えます。
こうした状況において、最近、我々が金融機関など債権者との間で実体験した事項等を紹介することで、今後の皆さんの今後の経営改善に役立てていただければと考えます。
記
第22回セミナ−を終えて
今回のセミナ−では、各コンサルタントが支援先との間で実際に推進した内容について説明し参考にして頂くと共に、最近の債権者の動向なども合せて紹介いたしました。
最初にサ−ビサ−に対する取り組みについて報告しました。
サ−ビサ−対応については過去のセミナ−で2回取上げております。
基本的には、債務者の事業状況や支払能力の現状を基本として支払額と支払期間を合意していくことが重要です。とは言え、サ−ビサ−が買取った債権額は分かりませんし、かつ、強硬な回収がなされるのではないかとの不安も拭えません。
そこで、一度支払額の合意(合意文書を交わすのは稀)に至り、相当の期間分割払いを行う中で、再度、交渉を行い支払額の圧縮を勝ち取った実例を紹介いたしました。サービサ−との交渉においては、一気に決着することに拘らず、時間の経過と共に双方が歩み寄れる状況を作っていくことも検討すべきと考えます。
また、サ−ビサ−と合意し支払完了をすると、「債務免除益」の対処が必要となります。免除益と言ってもキャッシュを得られる訳ではありません。繰越欠損金でもあれば良いのですが、最悪、納税資金を調達しなければなりません。利益は出たが資金繰りが付かず破綻と言ったことも笑い事ではありません。
こうした、免除益が生ずる場合の対策も、早い内から対策を講ずることが不可欠です。
次に、連帯保証についてですが、ここ数年、連帯保証に関する環境が徐々に変化しております。平成17年に民法の改正により「包括根保証」が禁止されました。翌18年には、信用保証協会おいては第三者連帯保証人を求めることが原則禁止となりました。事業者(社長)以外の保証人を求めないと言うことで、当然この金融庁の方針は金融機関にも周知されています。
更に22年12月には金融庁より「金融産業の活性化等のためのアクションプラン」と言う通達が出されました。簡単に言いますと、銀行が融資を行う時は@事業キャッシュフロ−を重視し、A担保や保証人に依存しない融資体制を確立しなさいと言うことです。
更に、仮に保証履行が必要となった場合でも、保証人の収入や生活実態を踏まえた対応をしなさいと言うものであります。
知人がその友人の借入金に連帯保証をしてしまったのですが、友人の事業が破綻し破産申請をしてしまいました。
相談を聞いていて私は明らかに違和感を感じました。
無職である知人が連帯保証をさせられたのは昨年23年3月でした。そして友人が自己破産を申立てたのは今年の3月です。
すなわち、金融庁のアクションプランが出された後の融資であり、貸手責任である債務者の適時なウオッチングもせずに僅か1年で破綻したことになります。
私は、知人と銀行を訪問し、昨今の金融情勢を踏まえ銀行としての考えを伺いました。当方としては免責していただくことを求め小1時間ほど話合いを持ちましたが、「本部案件、本部と協議する」と逃げられ、既に1ヶ月回答がありません。
奴隷制度である連帯保証制度は、やっと人間性を取り戻しつつあります。このような社会の変化を捉え、無用あるいは不適切な連帯保証を取下げるよう交渉してみては如何でしょうか。
次の金融円滑化法施行後の銀行の変化について取り上げました。
制定当初、究極のモラトリアム法などと言われ、あたかも債務を踏み倒すかのように言われておりました。実は、円滑化法は過大な債務に苦しむ中小企業を救済することよりも、体力の衰えた(地方)金融機関を救済する制度なのです。金融機関にとって債務者区分に基づく引当金の積増しは赤字決算に陥る可能性のある原因であります。しかし、円滑化法の施行に伴い一定の条件のもとで、債務者区分を「要注意、破綻懸念先」から「正常先」として評価しても良いとされたのです。
当然、弱った銀行にとっては約定に基づく返済を強要して破綻されるより、返済の猶予などリスケを受け入れ、債務者区分をアップさせた方が引当金が少なくなります。顔では嫌な素振りをしていますが、内心は胸を撫で下ろしているのです。
メガバンクにおいても若干の差異をありますが比較的容認姿勢にあります。大切なことは、現状の事業キャッシュフロ−と照らし合わせ、必要であれば積極的にリスケを申し入れ、法施行の間に事業の早期再生を図ることが重要です。
最後に、東海地方で製造業を営む売上高6億円ほどの会社の再生実例を紹介しました。
事業再生を進める場合、その企業が持ち得る「定量価値」と「定性価値」に注目するこが重要です。一般に「定量価値」における再生としては@B/Sの再生・・・オフバランス、AC/Fの再生・・・リスケジュ−ル、そしてBP/Lの再生・・・売上の改善、費用の縮減が上げられます。
同社については定量価値の改善には既に取組んでおり、更に事業の健全化を実現するためには「定性価値の見直し」が必要であり、その取り組みについて紹介しました。
定性価値の探索は、当然個々の企業の特性に即して異なりますが、同社における基本的な探求方法として、紙媒体とのコラボレ−ション、ワンストップサ−ビスや新たな商品・サ−ビスの開発など取り組みを紹介しました。