前略、
20年9月に発生したリーマンショック以降の厳しい経済情勢に対処するために、21年12月に中小企業者及び住宅ロ−ン債務者の救済支援のために「中小企業等金融円滑化法」が施行されました。その後も日本の経済は足踏み状況にあったことから、24年3月末まで1年間期限の延長がされました。23年6月現在での同法適用は中小企業者で1,113.8千件、住宅ロ−ンが101.8千件にも上っております。しかし一方では、同法の延長は「単なる問題の先送り」「解決なき延命装置」などと厳しい反対意見も多く、来年3月末での再延長は難しく打ち切られる可能性が濃厚と考えられます。
しかし現状を見ると、東日本大震災や原発問題、急速な円高などによって依然として日本の経済は厳しい状況が続くと考えられます。そうした中で、同法が期限打ち切りとなった場合、申請債権の多くが不良債権と見なされる可能性もあり、また、金融機関の対応の変化も気がかりな状況にあります。
そうした事態に対処していくためには、改めて事業の実態を見直し、新たな事業体制による事業の再建、継続を探求していくことも必要と考えます。今回のセミナ−では会社分割を中心に事業再編の仕組みについてお話させて頂きます。
記
【金融円滑化法終了後の事業継続について】
*** 会社分割・・・事業再編による新たなる出発***
国内の経済情勢を見ますと大震災、原発事故による消費の自粛、EUの経済危機、新興国の景気の減速等によって円の独歩高が続いており、先行きに不透明感が強まってきております。特に製造業では工場の海外移転やM&Aなどのよる、産業の空洞化が顕著となっており中小企業の経営に重く圧し掛っております。
09年に中小企業の資金繰りの改善を目的に金融円滑化法が施行されましたが、来年3月に期限が到来いたします。当初より『問題の先送り』との批判も多く、再延長は微妙な状況ありますまた、震災等により政府の中小企業対策も資金繰りの支援から、競争力強化のための資金供給にシフトされつつあります。こうした変化の中で、金融円滑化法の終了の如何に関わらず、事業継続を堅持するためにはバランスシ−トの改善や過剰債務からの脱却が急務であり、組織再編の手法も視野に入れた抜本的な改革が必要と考えます。
組織再編には事業譲渡や合併、株式交換などの手法ありますが、今回は小規模経営にとっても比較的取り組み易い手法として『会社分割』を取り上げてみました。
会社分割は決して新しい手法ではありませんが、06年の会社法の施行によって、よりアグレッシブな形態へと進化し、事業の再建・再生にも応用されることが期待されております。
中小企業をタ−ゲットとした会社分割のノウハウを説く書籍も数多く見受けられますが、都合の良い部分のみが強調されているケースが少なくありません。これを鵜呑みにして強引に分割した結果、債権者より手痛い仕打ちを受け、元の状態より悪化してしまった事例も少なくありません。会社分割は、元来『組織』再編を効率的に推進することを目的に制度化されたものであり、過剰債務の解消を目的とした事業の再生を踏まえた法制度ではないからです。
会社分割には「簿価による事業承継」や「債権者の同意は不要」と言った他の組織再編にはないメリットがあります。一方で、「債権者保護手続き」や、「事前の公告、催告」が規定されており理解しづらい点があります。
書籍によっては債権者に事前に説明することを推奨しているものもあります。しかし、そのようなにことをしたら、債権者から分割を反対され、直ちに回収、担保権の実行、差押などををされてしまうと不安に思うのが当然でしょう。
しかし、債権者(主に金融債権者)にとっても不良化した債権については早く処理をしてしまいたい、オフバランス化したいと願っているのです。債務者の過剰債務状態がある程度圧縮できれば、事業が活力を取り戻し採算性も上がり、回収の可能性が高まると考えております。
債権者には債権者の論理があり、債務者には債務者の思いがあります。
双方の利益が整合される接点がどこかにあるはずです。
賛成はできないが「積極的には反対をしない」と言う理論もあります。日本には「見て見ぬ振りをする」と言う寛大な習慣があります。ビジネスにおいて、性急に白黒を付けることが正しいとは限りません。「薄紫」であることが双方の立場を正しくする場合もあります。