事業再生において『連帯保証人制度』は大きな課題です。数年前『包括根保証』に対する法律が改正され、また昨今は『第3者連帯保証』を求めないよう金融庁も金融機関を指導しております。しかし以前に契約した『連帯保証』については全て有効であり、その意味するところを良く理解しておくことが大切です。
また中小企業においては、殆ど全ての借り入れにおいて経営者が『連帯保証人』となっていることが現実であり、また第3者に『連帯保証人』になってもらっているケースも多く存在します。
しかし、返済が滞る段階になって慌てて『連帯保証人』を守りたい、『連帯保証』をはずしたいとの声を聞くことが多く、そうなる前に『連帯保証人』としての実務を理解しておくことが重要となっています。
実例を交えてお話していくつもりです。
記
1.知っておきたい『連帯保証人』の実務
・・・・・・『保証人』と『連帯保証人』との違いなどの基礎から、 相続に至る派生的なリスクまで・・・・・
2.事業再生の現場から
連帯保証人に対する履行請求の対処如何によっては、人間としての再起を図るチャンスを失わせたり、家族を含めた社会生活を営む基盤すら剥奪する結果となる恐れもあり、保証履行に当たっては、保証人の収入や資産の状況を充分に踏まえた対処が必要と考えられます。
連帯保証制度は、奈良時代にその原形が形成され、当時は「共栄」「共存」といった理念のもとで営まれていたようですが、現代に至っては商工ロ−ンに代表されるように最初から保証人からの回収を狙った悪質なケ−スも多くみられております。
連帯保証人の場合、一般の保証人と異なり「催告の抗弁権」「検索の抗弁権」あるいは「分別の利益」と言った権利が与えられず、主債務者が不履行を起した場合、直ちにその全額を無条件で弁済する義務を負わされます。更には、連帯保証人が負った債務は、「相続」と言う制度を通じて、債務とはまったく無関係であった直系尊属に引き継がれ、多くの不幸な現実を生んできました。
近年、そうした反省に基づき、平成7年4月には「包括根保証制度」が禁止され、「貸金等根保証契約制度」と言う法律で制度化もされました。書面による契約、極度額の設定、元本確定日の定めなどが規定され従来のような青空天井的な保証は禁止されました。
また、平成18年4月には金融庁の監督指針として、信用保証協会(実質的には政府系金融機関にも適用)に対し、実質的に経営に携わる者以外に連帯保証を求めることを原則禁止するとの通達が出されております。適用は通達以降の保証(融資)が対象ですが、遡って該当する保証人を解除する機関も出てきております。
平成23年7月には、協会への指導を踏まえて、全金融機関に対し行内における制度整備を促す監督指針も出されております。
ひとつは、担保・保証に依存せず、キャッシュフロ−を重視した融資の促進。
もう一点は、経営者以外の第三者に連帯保証を求めない融資慣行の確立であります。また、保証人に対する事前の説明徹底、書面への自署・押印の励行、被保証債務の残高、返済状況の定期的説明、保証人の生活実態踏まえた履行態勢などを求めております。
このように連帯保証を取り巻く環境は徐々に改善されつつありますが、まだまだ多くの方々が連帯保証に苦しみ、真剣に離婚や家族の除籍などを考えている方も少なくありません。
では、連帯保証問題を解決する糸口とは何なのでしょうか。
債務不履行を起した時からが本当の意味で『連帯』が始まるのです。主債務者と連帯保証人が連帯して事にあたることが重要です。いくら約束が違う、迷惑欠けないと言ったと言ったところで、保証人として署名、押印をした大人としての責任は免れられません。債権者に対し其々がどのように責任を果たしていけるのか客観的にシミュレ−ションし、分割による弁済、資産の処分方法など債務者・保証人主導で交渉していくことが重要です。双方が責任を擦り付け合い反目していては、債権者の思う壺に陥ってしまいます。