前略、
第14回、15回のセミナ−では「金融円滑化法終了後の事業継続について」を題材に掲げ、同法の終了後に想定される金融の変化に対処しつつ、事業継続を確実にして行く手法のひとつとして「会社分割」を取り上げてみました。
一方、金融機関の側から見た場合、同法の終了に伴い債務者に対してどのような方針で望むべきなのか選択を迫られる事態が起こり得ると考えられます。債務者としてもそうした事態に翻弄されないためにも事前の準備が必要であると考えます。
金融円滑化法では、債務者との間で「実抜計画」や「合実計画」が策定されている場合は、金融検査マニュアルの基準よりも債務者区分のランクをアップして良いとされております。金融機関としては、引当金額が少なくても済むと言うメリットを得ることができます。
聞きなれない『実抜計画』『合実計画』とは一体どのような計画なのか、計画が求めるものはどのような条件なのか、また、計画がない場合、あるいは実現不可能な場合は破綻に追い込まれるのか、正しい知識と再生実務の知恵で対処することが必要と考えます。
今回のセミナ−はこの二つの計画についてと、計画が継続できない場合の対処法などについて、皆様にご案内したいと考えております。
また2011年の最後のセミナーでもあり、中小企業の経営と事業再生について役立つ推薦本のご紹介をさせ頂くことも企画しております。
記
1.金融円滑化法終了後の事業継続について
・・・・「実抜計画」と「合実計画」とは・・・
2.中小企業の経営と再生に役立つ名著のご紹介
金融機関は、貸出先(債務者)の経営や貸付金の返済及び保全の状況等に基づき6つの債務者区分に分類し、その区分に従い貸倒引当金を設定することを金融庁から求められております。
債務者からの返済が滞ったり、貸出条件の変更が求められた場合(貸出条件緩和債権)、債務者区分を下方修正し多額の引当金を積まなければならず、自己資本比率が低下してしまいます。それ故に、債務者に対しあらゆる手段によって契約の履行を強要し、結果的に債務者は更なる経営の悪化を招くことになります。
皆さんの中にも銀行より金利のアップを求められた経験を持つ方が居られると思いますが、「貸出条件を緩和した場合でも、当該リスクに見合った金利を徴収している場合は貸出条件緩和再建に該当しない」との金融庁の検査指針があるからです。
また、08年には「『実抜計画』がある場合は金利の要件がなくても良い」との検査改定がありました。『実抜計画』とは、「実現可能性の高い抜本的な経営再建計画」の略語です。主な条件としては、債権放棄など債権者からの支援が確定しており、概ね3年以内に債務者区分が正常先(借入が出来る)になることが確実な再建計画を指すものです。
しかし、債権放棄などの支援を受けづらい中小企業の場合は再建に長期間を要することから、09年の金融円滑化法の施行も相まって、『合実計画』を以って『実抜計画』と見なすとされました。『合実計画』とは「合理的かつ実現可能性の高い経営改善計画」の略称であります。その主な条件は、計画が5年以内で実現性が高いこととされておりますが、期間が10年以内であっても計画値が概ね8割程度で推移し、金融機関より債務免除や現金贈与などの支援を要せず、自力で事業継続可能であれば、債務者区分を「要注意先」まで回復して良いとされております。
今後、金融円滑化法が終了した場合は、引当金の積み増しを嫌う金融機関から『合実計画』の作成を強要されることも予測されます。しかし、実態を反映していない計画は一時しのぎであり何れ破綻に追いやられることとなります。
そのためには、今一度自社の事業シミュレ−ションをしっかりと行う必要があります。